研究内容

気候変動に伴う諏訪湖の物質循環の構造変化に関する研究(R7~R10年度)

気候変動の影響で温帯域の湖沼では成層構造の強化に伴う底層の貧酸素水塊の拡大が懸念されている。諏訪湖は、水質は改善してきたが夏季を中心に底層付近で貧酸素水塊の発達が認められており、その形成メカニズムの解明が必要である。
本研究では、諏訪湖沖帯での物質生産の構造や機能の測定、底層や底泥の有機物の形成過程の解明及び酸素消費速度の測定、底層の溶存酸素濃度の連続モニタリングや予測モデルに必要な気象データ等の連続モニタリングを実施し、これらを総合して諏訪湖の貧酸素水塊形成のメカニズムや要因を解明し、貧酸素水塊形成の予測モデル構築への基礎資料を提供する。

流域視点からの水環境保全・改善に向けた物質動態の解明(R7~R9年度)

高度経済成長期に富栄養化した諏訪湖では、植物プランクトン(アオコ等)の大量増殖が発生したが、その後、下水道整備等の各種対策により、水質は改善方向にある。現在、さらなる水質改善のため、農地、市街地、森林といった面源の汚濁負荷の把握と流域視点での削減対策が必要とされる。また、新たに、生態系への影響が懸念されるネオニコチノイド系農薬やマイクロプラスチックに対して社会的な関心が高まっている。
本研究では、主に諏訪湖流域を対象に、これら物質の分布・流出実態を明らかにし、水環境保全対策への基礎資料を提供する。

具体的な研究

  • 諏訪湖主要流入河川の負荷量調査
  • 野尻湖主要流入河川の負荷量調査(水質保全計画に資する調査として実施)
  • マイクロプラスチックの実態把握に関する研究
  • ネオニコチノイド系農薬の環境残留に関する調査研究

湖沼沿岸帯の生物多様性保全を目指した適正な生物管理に関する研究(R7~R9年度)

多様な水生植物の生育や水生動物の再生産の場となる県内の湖沼沿岸帯(主に諏訪湖と野尻湖)を対象として、生物の分布動態把握のための技術を開発し、これらの技術を活用して水生動植物の生態・機能を把握することで、県内湖沼の適切な管理に必要な科学的知見を集積する。
生物の分布動態把握のための技術開発としては、ドローンや人工衛星を活用した水草モニタリング手法や、環境DNAによる魚類等の生息種・分布密度推定手法の開発を行う。
これらの手法開発と並行して、「水草群落での水質、微生物、魚類等の動態の把握」及び「水草刈取船によるヒシ除去や外来魚駆除などの生態系管理に関する調査」を行い、適正な生物管理に向けた提言につなげる。

具体的な研究

  • ドローンや人工衛星を活用した水草モニタリング
  • 環境DNA等による水生生物の分布推定
  • 水草群落の微生物や魚類の調査
  • 希少種メガネサナエの分布動態調査(諏訪湖)
  • ヒシ刈りの影響調査(諏訪湖)
  • 外来魚の個体数動態調査(諏訪湖)

PFAS等の微量化学物質の環境残留実態の解明と効果的な環境モニタリング手法(体制)の構築

有機フッ素化合物(PFAS)は、水や油をはじき、熱に強い化学物質で、調理器具のコーティングや泡消火剤などに広く使われてきた。しかし、近年、人の健康への影響が懸念されるようになり、河川や地下水の汚染実態について社会的な関心が高まっている。そこで、データの乏しい県内公共用水域を対象にPFASの環境残留実態を明らかにする緊急調査を行う。
また、環境リスクの把握及び災害時等の汚染物質への迅速な把握を目的にLC/QTOF-MS(液体クロマトグラフ四重極飛行時間型質量分析計)による網羅的な分析手法を導入し、未規制物質を含む微量化学物質の実態調査を試みるとともに、効果的な化学物質モニタリング手法(体制)を検討・確立する。

具体的な研究

網羅的分析手法による平常時データの蓄積(災害時に活用)

有機フッ素化合物(PFAS)の環境残留実態調査