コラム
諏訪湖の希少なトンボ「メガネサナエ」
コラム
2025年3月31日
諏訪湖及びその流入河川には、メガネサナエという希少なトンボが生息しています。メガネサナエは、湖や池などに流れ込む川で孵化し、その後、幼虫(ヤゴ)は川を下って湖内で2~3年程度かけて成長します。成長したヤゴは初夏に羽化して成虫になり、秋にかけて繁殖行動(交尾、産卵)を行います。このように、メガネサナエは湖や池のような流れのない止水とそこに流れ込む川のような流水の両方の環境が必要な生き物です。現在、メガネサナエは、琵琶湖、愛知池など愛知県の一部、諏訪湖にのみ生息が確認されている絶滅危惧種で、琵琶湖や愛知池などでは、その数は減少しています。生物多様性を守るためには、このような絶滅危惧種に着目した保全活動をすることがとても大切です。そして、そのためにはメガネサナエがどこでどのように生活しているかを把握することが必要になります。


諏訪湖環境研究センターでは、諏訪湖のメガネサナエの生息状況や、環境による影響などを把握するため、諏訪湖の桟橋でメガネサナエの羽化殻(幼虫が羽化した後に残る脱皮殻)の調査を、メガネサナエが繁殖行動を行う河川で成虫のモニタリング調査を行っています。なお、これまで調査を行った2019年から2024年の期間においては、諏訪湖のメガネサナエの減少は確認されませんでした。また、羽化殻の調査結果を地点ごとに比較したところ、近年諏訪湖で大量繁茂している水草「ヒシ」の繁茂が少ない場所では、メガネサナエの羽化殻の割合が、他のトンボの羽化殻の割合に比べて多いことがわかってきました。なぜこのような結果になったのか、詳細はわかっていませんが、今後の調査で要因がわかれば、メガネサナエの保全に役立てることができるかもしれません。
【参考文献】
尾園暁・川島逸郎・二橋亮(2021):ネイチャーガイド 日本のトンボ 改訂版.文一総合出版.
白神宏恵(2018):琵琶湖博物館研究調査報告 第30号「滋賀県のトンボ(2010年代)」.琵琶湖博物館.
吉田雅澄(2018):メガネサナエ属の分布はなぜ局地的か? Aeschna 54:1-9.
吉田雅澄(2020):愛知県の絶滅のおそれのある野生生物 レッドデータブックあいち 2020.愛知県環境部自然環境課.
執筆:宮坂