コラム

鉄平石の下でひそかにくらす諏訪湖のシジミ

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2026年8月19日

かつての諏訪湖はシジミ貝がたくさんとれましたが、2000年代以降はほとんど姿が見られなくなりました。県では、シジミを「多様な生き物がくらす湖」をめざすうえで大切な指標生物と位置づけ、「シジミがとれる諏訪湖」を目標に水質改善や覆砂による生息環境づくりを進めています。しかし、近年の調査では、生まれたばかりの当歳貝(1歳未満)は見つかるものの、産卵できる親貝がほとんどみつからないことが課題になっています。そこで私たちは、親貝がどのような場所を選んで生活しているのかを明らかにするため、諏訪湖の湖岸6か所で合計180地点の調査を行いました。各地点の湖底に積もった堆積物を掘り返して貝類を採集し、水深や底質の種類を記録しました。採集したシジミは殻の長さを測り、大きさごとに「どんな環境を選んでいるか」を分析しました。

その結果、まず、シジミは大きさにかかわらず水深0〜10センチほどのごく浅い場所を好み、10センチより深い場所を避けることがわかりました。次に、底質の好みについてはシジミの大きさによって違いがあり、1センチより小さなシジミは巨礫(25センチより大きな石)を避ける一方、2センチより大きなシジミは逆に巨礫が多い場所を選ぶ傾向が見られました。成長につれて安心してくらせる場所が変わるのかもしれず、そのような場所を探せば親貝となる大きなシジミもみつかる、ということがわかりました。

諏訪湖で採集された大きなシジミ貝

これらの結果は、これまで知られていた「シジミは砂や細かい礫のある浅場にすむ」という一般的なイメージと異なっています。現在の諏訪湖には、魚やカモ類、ザリガニなどの捕食者が多く生息しているため、シジミが本来すみやすい場所ではなく、捕食されにくい浅くて石の多い場所を選ばざるを得なくなっている可能性があります。したがって、シジミが成長し、産卵できる親貝が増えていくためには、浅い場所以外でもくらせるようにシジミの成長段階に合わせた底質にする工夫が必要だと考えられます。今回の調査は、諏訪湖のシジミを再び育てていくための環境づくりに役立つヒントを示すものとなりました。

諏訪湖の沿岸に造成された砂利浜(人工なぎさ)

ところで諏訪湖の湖岸には、水辺の植物が生えやすく、人々が親しみやすいように整備された“なぎさ”があるのをご存じでしょうか。そこには角の丸い玉砂利が敷き詰められ、玉砂利の流出を防ぐために少し沖側に鉄平石が沈められています。3センチほどの厚みで平らに割れやすい鉄平石は、捕食者から身を隠すのに都合がよいのか、その下にはシジミをはじめ、さまざまな水生生物がひっそりとくらしています。鉄平石をそっと持ち上げてのぞいてみると、思いがけない発見があるかもしれません。

諏訪湖に投入された鉄平石

【参考文献】

  • 長野県諏訪地域振興局(2023):諏訪湖創生ビジョン 2023年(令和5年)3月改訂版.URL: https://www.pref.nagano.lg.jp/suwachi/suwachi-kikaku/vision/documents/vision-kaitei-all.pdf(2026年6月30日時点)
  • 柳生将之(2025)諏訪湖における淡水シジミ類の生息場所選択性. 日本陸水学会甲信越支部会報第51号: 93-94.

執筆:柳生将之

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